私は、内分泌領域を専門としておりますが、前職では産婦人科全般の診療を行い、手術も多数執刀しておりました。初診から外来診療、手術を含む入院治療、分娩まで幅広く担当してきたこれまでの経験と知識を生かして、体外受精も含む不妊治療だけでなく、婦人科の一般外来診療についても、広い視野で行っていきたいと考えております。
近年、結婚年齢、初産年齢は上がり続けており、平均の初産年齢は30歳を超えています。女性が活躍する時代となり、責任が重い多忙な仕事のため、不妊治療のために通院するのが難しい女性も多くなっていると思われます。結婚後、すぐに妊娠するだろうと思っていたけれども、なかなか妊娠しないまま何年も過ぎてしまって、その間に妊娠が期待しやすい時期を逃してしまうケースも少なくありません。
婦人科で診察を受けたくて受診する患者さんは、まずいらっしゃいません。婦人科の症状や、不妊に悩んだ末に、勇気を振り絞って受診にお見えになるところだと思います。そのため、当クリニックは①受診しやすく②話をしやすく③説明がわかりやすく④診断が確かで⑤きちんとした方針を立てて治療を行える施設でありたいと思っております。
比較的高年齢(概ね35歳以上)で妊娠を希望されている方、年齢は若くても半年以上なかなか妊娠しない方や月経不順がある方など、不妊に関する不安がある場合は、まずはご相談いただければと思います。
~女性アスリートの方々へ~
女性アスリートが置かれた状況についても、婦人科医として何か力になることができないかと考えています。私自身、高校時代には陸上競技部に所属しており、当時は何の知識もありませんでした。「低体重、無月経は当たり前」という認識が大多数であり、月経周期などについて指導者や保護者に相談するという発想さえありませんでした。
産婦人科医として仕事をするようになってから、無月経や月経困難のために受診したアスリートの患者さんに対して、ホルモン剤による治療を勧めたり、摂るべき栄養について説明したりしても、指導者による「パフォーマンスが落ちるからピルは飲まないほうがいい」などといった根拠のない反対によって治療できなくなるという経験がありました。実際には、ピルによってパフォーマンスが低下することはないという根拠のあるデータがあるにも関わらずです。
最近は、女性アスリートが、利用可能なエネルギーの不足、無月経、骨粗骸症をきたした結果、疲労骨折などのために、今現在のパフォーマンスが低下するだけでなく、将来の選手生命を短くしてしまう結果に繋がることはよく知られています。極端に低体重であることが望ましい状態であるという認識から、摂食障害を起こしてしまう場合もあり、将来的に不妊症になってしまう危険もあります。
海外では、月経周期のコントロール(大事な試合の時期に月経が来ることを避ける)と、月経時や月経前の不快な症状の緩和などの目的で、アスリートに対するピルによる治療はごく一般的に行われています。
一方、日本では、ピル等のホルモン剤の使用が敬遠される傾向にあります。選手としての現時点でのパフォーマンスを維持・向上させるとともに、将来的な故障のリスクを低下させること、選手としての現役生活を終えた後の長い人生のことも考慮した上で、アスリートご本人だけでなく、指導者や保護者の方々にも、ホルモン剤や栄養学についての正しい知識を広くお伝えしていきたいと考えております。